特許権に関してよくある勘違い
諸事情により、しばらくブログの更新をお休みさせていただいておりました。ご心配をおかけいただいた皆様、ありがとうございました。
早速ですが、今日は、特許権についての基本的な話をしたいと思います。
特許権についてのよくある勘違いとして、次のようなものがあります。
(1) 既にある発明が特許出願済みなので、もうその特許に抵触することができない
(2) 社長が発明した特許は、会社のものである。
これらについて、改めて整理しておきます。
まず、(1)について、検討します。
既に、ある発明が特許出願済みであっても、それが審査請求され、特許料を納付して登録されなければ、特許権となることはありません。特許を出願すると、出願日から1年6月経過後に自動的に公開され、「特許出願20○○-○○○○○○」といった番号で、公開されますが、それだけでは特許権ではありません。単に、過去に出願されたということに過ぎません。勿論、今後、審査請求され、特許権化する可能性はありますので、この点は、十分に検討する必要があります。
ただ、出願から3年以内に審査請求のない出願は、取り下げられたものとみなされます。以後権利化することはできません。したがって、3年以上前に出願され、且つ未だに審査請求がなされていない場合は、その出願された発明については、特許権化されません。
仮に審査請求され、拒絶査定ではなく、特許査定が下りた場合は、特許料が納付されると特許登録原簿に載り、特許公報が発行されます。この場合は、特許権として有効です。ただ、無効審決や裁判の結果によって無効化した場合、権利存続のための特許料が納付されていない場合、特許権存続期間が満了した場合は、有効ではありません。
次に、(2)について、検討します。
社長が発明した特許は、特許を受ける権利、又は特許権自体を会社に譲渡しない限り、会社は特許権者ではありません。会社は、実施許諾を受けている(通常実施権を有する)に過ぎません。特許を受ける権利を会社に譲渡した場合でも、特許権を会社に譲渡した場合でも、会社は、相当な対価を社長に支払う義務があります。
特許を受ける権利や特許権が、会社に帰属しているのか、社長個人に帰属しているのかという点は、事業上、問題とならないことも少なくありませんが、ベンチャー・キャピタルから資金調達するケースや、上場を視野に入れているケースは、注意を払った方がよいでしょう。また、会社に譲渡済みであったとしても、相当な対価が支払われたか否かも、重要です。