ベンチャー法務の部屋

今月の重要判例(追加)

昨日も重要判例がありましたので、追加です。

3 「ロクラクII」事件最高裁判決

平成21(受)788 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件 平成23年01月20日 最高裁判所第一小法廷 判決

原文はこちら(PDFファイル)

放送番組等を録画する機械は会社側において、録画の指示を利用者がするというサービスについて、私的使用を目的とする適法な複製なのか、違法な複製なのかが争われた事案です。すなわち、複製の主体は、録画する機械を管理している会社か、録画の指示を出している利用者かという点が争点です。

この点、本判決では以下のように判示しています。

放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において, テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」とい う。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が 自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容, 程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービ ス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても, 放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。
以上によれば,本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく,親機ロクラクが被上告人の管理,支配する場所に設置されていたとして も本件番組等の複製をしているのは被上告人とはいえないとして上告人らの請求を 棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

また、次の金築誠志裁判官の補足意見も重要でしょう。

「親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。」
「著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れ た解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。」

最後の補足意見は、結局このサービスは、海外留学中の息子が母親に「今度の○○っていうテレビ番組とっておいて。」「そのテレビ番組をDVDにして送ってよ。」というのとは、社会的、経済的に意味が違うでしょうということを言っているのだと思います。それは、わざわざ利用者のために、複製を容易にするための環境等を整備した上、番組情報の入力等の複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしているという実態があるからということになります。

この判決についても、昨日の「2」の「まねきTV」事件最高裁判決とともに、著作権が関連するサービスに大きな影響を与えるでしょう。判決に対する賛否も両方あり、これから喧々諤々の議論がなされると予想されます。

執筆者
S&W国際法律事務所

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