エディット・ピアフ
今日は、クリスマス・イブですので、クリスマスらしいかはわかりませんが、ベンチャーとも法律とも関係のない話をさせていただこうと思います。
最近、エディット・ピアフという方の自伝を読みました。本のタイトルは、『わが愛の讃歌―エディット・ピアフ自伝』です。誠に恥ずかしい話ですが、最近まで、彼女のことをほとんど知りませんでした。
フランスが生んだ最高のシャンソン歌手であり、「薔薇色の人生 La vie en rose」や「愛の讃歌 Hymne à l’amour」という数々の美しい歌を歌った女性です。誰しもが一度は耳にしたことがある曲であり、世界中で数多くの歌手、日本でも、越路吹雪さんや美空ひばりさんをはじめとする数々の歌手がカバーしています。
彼女の人生は、一言で言えば、壮絶な人生です。彼女は、凄まじい生い立ちの中、天性の歌声で歌い続けることで生きた女性です。麻薬とアルコール、浪費癖、数多くの男性との恋愛遍歴、最愛の恋人マルセル・セルダンとの死別、娘マルセルとの死別。なぜ、このように過酷な運命が次々と彼女に襲いかかるのかという程に、過酷です。しかし、そのような過酷な運命の中でも、歌、そして人への想いを胸に生き続けます。1963年、47歳で亡くなった彼女ですが、彼女の歌声は、今なお世界中で愛されています。
歌は私にとって、自分自身であり、自分の肉体であり、血であり精神であり、心であり、魂なのです。ほかにどうお話ししたらいいでしょうか?(引用終わり)(中井多津夫訳『わが愛の讃歌―エディット・ピアフ自伝』177頁)
彼女の自伝の最初の章の題は、”je ne regrette rien”(私は何も後悔しない)です。私は、彼女の人生から教訓めいたものを得たいわけではありません。ただ、カトリックの世界からすると、数多くの罪を犯していると思われる彼女の行動を前提にしても、彼女が後悔しないと言えたのは、ある意味、素直な心があったからのようにも思います。彼女が、恋人マルセル・セルダンと遊園地でデートしていたところ、周りの人に気づかれたときのエピソードです(マルセル・セルダンは、ボクシングの世界ミドル級王者だった。)。
その時、だれかがこう叫びました。
《エディット〈バラ色の人生〉をうたって下さい》
すると、回転木馬がみんなとまり、あたりがしーんと静まりかえってしまいました。
私は〈バラ色の人生〉をうたいました。
私がうたいおわると、いっせいに拍手喝采が湧きおこりました。ふと振りかえってみると、マルセルがあっけにとられたような表情をみせているのです。その時、彼はこう言ったのです。
《エディット、きみはぼくなんかよりずっと素晴らしい仕事をしているんだね。あのひとたちに愛と幸せをあげるのがきみの仕事なんだから》
彼の言葉をきいて、私は自分の両頬に涙が流れていくのを感じました。私がセルダンより素晴らしいだなんて!それはひとりの男性が私に与えることのできる最も美しい言葉でした。もちろん、私がそれに価するような人間だなんて、これっぽっちも思っていません。
セルダンのことを話しだすと、そうなんです、私は彼のことを話しているだけでとってもいい気持になれるのです。(引用終わり)(同書、68頁)
多くを語るより、彼女の歌声を聞いていただいた方がよいことは間違いありません。クリスマス・ソングも良いですが、彼女の歌も聖夜にお勧めです。
今日は、クリスマス・イブです。多くの人が素直な気持で素敵な人と一緒に過ごせることを心から祈っています。