ベンチャー法務の部屋

金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(中間案)の公表

 
 
金融庁から12月7日付けで「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(中間案)の公表及び同プラン(中間案)に係る御意見の募集について」と題して公表及び意見募集が開始されています。
 

金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(中間案)

http://www.fsa.go.jp/news/22/sonota/20101207-2.html

 
IPOを目指す会社やIPO関係者は必見と思われます。

詳細に読んでいませんので、ざっくりとみたところの感想を申し上げますと、「民法上の任意組合に関する金商法の適用関係の明確化」や「投資運用業の規制緩和」等、金商法による規制は、負担軽減の方向性が打ち出されているようですし、「例えば、売上げに占める割合がごくわずかである項目の予実乖離等、企業全体か ら見て軽微と考えられる事項については審査を簡略化する」等、引受審査による負担は軽減化の方向で検討されているようで、(具体的に変な方向に進まないのであれば)評価し得るように思われます。ただ、ところどころ「ん?」というものもあります。「ん?」の代表的なところは、「銀行・保険会社の投資専門子会社によるベンチャー企業等への劣後ローン等の解禁」や「金融機関において、企業の業況、財務内容等だけではなく将来の成長可能性も重視した融資等に取り組むことを促進する」という部分です。

前者は、(私が勉強不足だからかもしれませんが)銀行・保険会社の投資専門子会社がベンチャー企業に劣後ローンで融資するケースがあまり想定できません。劣後ローンのCB(新株予約券付社債)をつなぎ融資的に利用するというのであれば、わからないでもないですが(次のラウンドで○円以上出資を受けたらorマイルストーンを達成したら、DESしてあげますよというイメージです。)、少なくともベンチャー企業側は、「劣後」だから嬉しい(資金を利用しやすい)というケースは稀だと思います。

後者は、一昨日のエントリーでも書いたように、借入(デット・ファイナンス)では、融資先がつぶれないことが重要であり、将来の成長可能性なぞ、それが2Xのストーリーであっても100Xのストーリーであっても(利息制限法の範囲内でしかリターンを得られない融資では、)お金の出し手にはほとんど意味がありません。銀行にとっては、融資先への「将来、成長するの?」という質問はあまり意味がなく(リターンにつながらず)、「将来、つぶれないよね?!」という点が関心事です(リターンに影響する)。

結局のところ、ベンチャー・キャピタル的な業務を公的な形で直接サポートしていくのは、かなり難しく、よほど上手くやらないと、良い効果が得られないように思います。それは、ベンチャー・キャピタルが、リーダーの情熱やチームワーク、それにビジネスモデルをもとに出資するかどうかを判断する極めて属人性の高い、直感力を要する仕事だからです。今日、シリコンバレーで活躍するエンジェルとベンチャー・キャピタリストのお話を聞かせていただきましたが、この点は間違いないと思います。公的資金を出資の形でベンチャー企業に入れるとなると、キャピタリストの腕を信じて、全面的に任せるような形でないと、なかなか上手く行かないのではないでしょうか。全面的に任せるのが難しいのであれば、投資自体は市場に委ね、投資しやすい環境整備に注力していただいた方がよいでしょう。

逆に、(私も含めた)民間側は、自由であるが故に、それぞれの方法で、スタートアップ企業、ベンチャー企業が成長するための生態系を活性化させて、一つでも多くの素敵なビジネスが世に出て、社会がより良くなることを望んでいます。公の仕組みやお金との間で、よりよい連携ができると良いですね。

執筆者
S&W国際法律事務所

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