ベンチャー法務の部屋

「あきらめない」を続ける凄さ

2010.12.09

昨日に引き続き、IVSからの話題です。

2日間にわたって、開催されたIVSの最後のセッションをを彩ったのは、登山家の 栗城 史多 さんでした。「NO LIMIT – 自分を超える方法」というテーマでお話くださいました。

多くの参加者が「なぜ登山家?」「ベンチャーとどういう関係?」という感じで、このセッションに臨んでおられたように思います。実際、私も、「面白いのかな?」くらいの感じで聞き始めました。

しかし、終わってみると、スタンディング・オベーション。会場の誰しもが、その語りと情熱に引き込まれていました。

「ベンチャー企業の経営者に必要なものは何か」という質問には、多くの答えがあると思います。その多くの答えの中に、「あきらめないこと」が含まれることには異存はないと思います。安直にあきらめたり、環境のせいにするリーダーには、誰もついていかないでしょう。

栗城 さんの話を一言で言えば、「あきらめないこと」につきます。ただ、その程度が、想像を絶するレベルです。このエントリーでどれだけお伝えできるかわかりませんが、常に生死を賭けたぎりぎりの世界で生きてこられた人の話は強烈なリアリティーがありました。

「ここであきらめたら、他の困難な出来事に出会っても、環境等を理由にあきらめてしまうことになる。それだけは、絶対に嫌だ。」との思いが、栗城 さんを多くのチャレンジに駆り立てているそうです。大学に入ったばかりの頃、自宅で完全に無気力となり、寝込んで、布団に人形のカビが生えたこともあったとのこと。その後、様々な過程を経て、登山の道に入ります。

登山の道に入ってからは、一見無謀とも言えるチャレンジに立ち向かってこられました。登山の世界の先輩が反対する中、大学生で北米最高峰のマッキンリー単独登頂に挑戦して成功し、また1億円を超える資金集めにも挑戦し達成されてこられました。

栗城 さんの登頂のチャレンジは、決してただの無謀ではありません。リスクがあること、生きて帰ってくることができない可能性があることは勿論承知されておられますが、無意味に命を賭けにさらしておられるわけではなく、あと少しで頂上につけるとわかっていても、帰ることができないと予想されるときは、シェルパの指示に従って、下山し、登頂をあきらめたこともあったようです。 このあたりは、昨日のエントリー「ベンチャー企業のCFOとは」とも共通する部分があるように思います。

成し遂げたいという思いとそれに向かう行動力、そして「あきらめないこと」において企業経営者と登山家は同じかもしれません。それどころか、生死を賭けた挑戦である登山の方が遥かに厳しい道のりではないでしょうか。栗城 さんの話は、人を引き込む強烈な力がありますので、ぜひ直接声を聞いていただくのがよいと思いますが、『一歩を越える勇気』と『NO LIMIT ノーリミット 自分を超える方法』という2冊の本を出版されておられますので、登山に興味ある方は勿論、そうではない方も、ご一読されるのもよいかもしれません。少なくとも「あきらめた」とおっしゃる前に。

執筆者
S&W国際法律事務所

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