非上場会社の社長がtwitter、重要事項公表は問題?
今朝(11月1日朝刊)の日経に、
(リーガル3分間ゼミ)社長がツイッター、重要事項公表は問題? インサイダーに該当も
という記事が掲載されていました。
この記事は、自社の社長が最近、「ツイッター」に書き込みを始めたが、新しい事業や経営戦略にも言及しており、何か問題はないだろうかと悩む広報担当者の問題を取り扱ったもので、金融商品取引法上のインサイダー取引規制や風説の流布の問題、そして上場企業としての開示姿勢の問題として、この問題を取り上げていました。
では、非上場会社の社長がtwitterをした場合には、何か問題になるのでしょうか。
インサイダー取引規制は、上場会社等及びその子会社の業務に関する重要事実が問題となります。また、この規制の対象となる会社関係者に含まれる役員については、当該上場会社等並びにその親会社及び子会社の役員が問題となります。(上場企業等とは、「第二条第一項第五号、第七号又は第九号に掲げる有価証券(政令で定めるものを除く。)で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券又は取扱有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券の発行者」を意味します。金融商品取引法第163条第1項)
したがって、非上場会社の社長が自社の新しい事業や経営戦略についてtwitterで言及しても、通常は、インサイダー取引規制の問題は発生しません。但し、取引の相手方が上場企業等の場合は、たとえ契約の交渉段階だったとしても、その上場企業等の「会社関係者」としてインサイダー取引規制の問題が生じる可能性がありますので、この点には注意が必要です。
風説の流布についても、状況は似ており、「有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため、又は有価証券等(有価証券若しくはオプション又はデリバティブ取引に係る金融商品(有価証券を除く。)若しくは金融指標をいう。)の相場の変動を図る目的」の場合にのみ問題となりますので(金融商品取引法第158条)、非上場会社が発行する株式は、有価証券の募集等に該当しない限り、基本的に金融商品取引法上の「風説の流布」が問題になることはありません。但し、欺罔行為と判断されて、別途、詐欺等を構成する可能性は否定できません。
また、非上場企業であっても、締結している秘密保持契約違反に該当する可能性がありますし、特許や実用新案に関する場合は新規性の喪失の問題が生じる可能性もあります。また、事業戦略上の問題が発生する可能性(戦略がライバル企業に漏れる等)があり、取締役としての善管注意義務違反の問題が生じる可能性もあります。
したがって、非上場企業の社長がtwitterをした場合には、
(1) 上場会社等やその関連する会社についての重要事実や取引のうち手続に則った公表が為されていない情報には触れない
(2) 自社のことであっても虚偽の話や不確かな話はしない
(3) 秘密保持契約の対象となっている事項や知的財産権が絡む話題、会社の経営戦略上重要な情報には触れない
といった点に留意する必要があると考えます。