IFRSを学ぶために
以前から話題に上ることは多かったですが、最近、IFRSについての話題がかなり増えてきたように思います。基本的には会計基準の変更ですので、対応するための費用を除いては、将来のキャッシュフローが変わるわけではありませんので、企業価値自体に直接影響を与えるわけではないですが、IFRS対応後の財務諸表に慣れるという意味では、今から、上場企業の財務担当者のみならず、経営者や投資家は避けて通ることができない話題なのでしょう。
IFRSは、より実質を優先した内容となっており、私が読んだ本の中で、尊敬する会計士の武田雄治先生が執筆された『あっ、そういうことか!IFRSガイド』という本が一番わかりやすく、理解が進みましたので、この場でお薦めさせていただきます。
この本の中では、IFRSの特徴として、以下の8つが挙げられています。
(1) 原則主義(プリンシプル・ベース)
(2) 詳細な注記開示
(3) 比較可能性の重視
(4) 資産負債アプローチ
(5) 経営者の恣意性の排除
(6) 経済的単一体説
(7) 実質優先思考
(8) 演繹的アプローチ
このうち極めて重要なのが、(4) 資産負債アプローチ と、(6) 経済的単一体説 です。
これまでの日本基準の「収益費用アプローチ」から、IFRSの「資産負債アプローチ」への転換は、劇的かもしれません。収益-費用で純利益を算出していた世界から、期末純資産-期首純資産によって、包括利益を算出する世界に移行するということだと思われます。また、そもそもの資産の概念や負債の概念も、将来のキャッシュフローをベースとした実質的なものに変容されているようです。
(6)経済的単一体説とは、連結の基礎概念を、持ち株基準ではなく支配力基準とする変容を意味するとのことです。法律家の私は、「既に日本の会社法ではある意味、支配力基準ではないか」と考えてしまいましたので、初めて聞いた時にあまり大きなインパクトはなかったのですが、財務諸表を作成する側からすると、いろいろと大変な問題が生まれてくるのかもしれない等と考えます。
IFRSへの移行は日本の財務関係者には大変な重石となることが予想されますが、一方で経営面においては、キャッシュフローを重視した経営がさらに求められることを意味しているように感じました。
【追記:2010/11/01】 上記のエントリーの後、武田先生から『IFRSを理解するためには「資産負債アプローチ」と「経済的単一体説」の理解が極めて重要!』とのエントリーにて、コメントをいただきました。こちらも紹介させていただきます。