イマドキの20代起業家の本音
今月25日月曜日に、「20代起業家の本音 「i世代」座談会 「ネットのチカラ」第3部 冒険者たち(1)」(2010/10/25 7:00 情報元 日本経済新聞 電子版)
という日経の特集がありました。
――創業時の資金はどう調達したのか。
石原氏 親せきを土下座して回った。ベンチャーキャピタルからの調達は考えなかった。経済産業省の外郭団体からも支援を受けられた。エンジェルとして資金を出してくれる人もいた。
――多くの大学で「起業サークル」がブームと聞く。
石原氏 僕には「起業ごっこ」にみえる。そういうサークルの学生も最終的には大手企業に就職している。起業しようという人はサークルなどに行かずとっくに起業しているのではないか。
――日本は「失われた20年」ともいわれ、経済に元気がない。
柿山氏 月に1回海外に行くが、中国やインド、シンガポールに行くと人々の目つきが全然、違う。世界を変えよう、負けたくないという雰囲気がある。日本の学生の友人にはそれがない。挑戦しようという環境がない。そこを変えないと成長できない。これからは個人がインターネットでエンパワーされる(力を身につける)時代だと思う。
石原氏 少子高齢化は避けられない。だが、企業にできること、日本発でできることがあるのではないか。海外で通用するサービスをつくり、外貨をとってくることが大事だ。負けてはいられない。われわれにはウェブという共通言語がある。どこの国にも共通の土俵だ。そこで戦うことで雇用も生まれ、新しい産業になる。日本はもちろん世界を変えるサービスをつくりたい。
柿山氏 日本の商品、人間性、文化は世界で認められている。なぜ積極的に外に出て行かないのかと思う。
石原氏 外に出る発想を教育されていない。米国では小さいころからビジネスやお金の使い方まで学ぶ。日本の学生はお金の使い方も分からない。かつての高度経済成長、バブルの流れを変えずにきてしまった。親の世代も今後の世界の流れを読めず、子供に教えられない。それを変えるのは教育の問題だ。
――起業家として何をめざすか。
石原氏 日本でのIPO(株式公開)は考えていない起業家が多いと思う。具体的に話題になるのは韓国など海外での上場だ。海外企業に買収されることも、タイミングがあえば選択肢になる。事業がある程度順調にいけば資金もたまるはずで、そうなればエンジェルとして起業家を支援する側に回りたい。(引用終わり)
等と非常に興味深いやりとりがあります。
最後の、なぜ日本での上場ではなく、海外での上場を考えるに到ったかという点も、大いに興味をそそられます。
一方で、「クリック証券、韓国上場を中止 環境悪化で株主反対」(日本経済新聞2010/10/20 1:11)というニュースもありました。
インターネット証券のクリック証券が韓国取引所(KRX)への上場計画を中止したことが分かった。6月に上場承認を得ていたが、「韓国市場で証券関連株が低迷を続けており、十分な資金調達ができない」と大株主が反対したという。高島秀行社長は「今後当面はどの市場にも上場せず、別の資金調達手段を考える」としている。(引用終わり)
海外上場には、資金調達額が大きくなる可能性があるというメリットがある半面、日本と現地の双方の証券会社、監査法人、法律事務所等が上場に関与し、また、現地の証券取引法に基づく開示を行わなければなりませんので、継続開示についても会計や証券取引法の分野でコストがかかるというデメリット等が考えられます。他にも、(是非はともかく)株主に外国人投資家の比率が大きくなる等が考えられます。よほど前者のメリットの方が大きくないと選ばないのではないかとも思うのですが、やはりそれだけ内外の市場の熱の差があるのでしょうか。
とはいえ、20代起業家が世界市場を意識してビジネスを展開するという志を持っておられるのは、本当に頼もしい限りです。大きな会社から中小企業・ベンチャー企業まで、様々なタイプの企業が、世界を相手に新しいビジネスを生み育てていく土壌がこれからも醸成されていけばよいな、と思います。