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社債には特段の事情がない限り利息制限法第1条の規定は適用されないと判断した事例(令和3年1月26日最高裁判所第三小法廷判決・金融商事判例1620号11頁)

2021.12.10
S&W国際法律事務所

【事案の要旨】
株式会社であるAは、社債の発行として、募集総額、社債の金額、社債の利率、社債の償還方法及び期限、利息の支払方法及び期限等の事項を定めて募集をした。
Yは、この募集に応じて引受けの申込みをした者として、Aに対し、平成24年6月28日及び同年7月24日、各1000万円を支払って社債としての割当てを受けた。
Aは、Yに対し、平成27年9月30日までの間、社債の利息及び償還として金銭を支払った。
Aは、平成28年4月13日、破産手続開始決定を受けた。
そこで、Aの破産管財人であるXが、YはAに対して社債購入名下に、計2000万円を貸し付け、Aから利息制限法所定の上限を超える約定金利で弁済を受けたと主張して、不当利得返還請求権に基づき、同法所定の上限を超える利息相当額等の支払を求めた。

【判決要旨】
利息制限法1条は、「金銭を目的とする消費貸借」における利息の制限について規定しているところ、社債は、会社法の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であり……、社債権者が社債の発行会社に一定の額の金銭を払い込むと償還日に当該会社から一定の額の金銭の償還を受けることができ、利息について定めることもできるなどの点においては、一般の金銭消費貸借における貸金債権と類似する。
しかし、社債は、……社債の成立までの手続は法定されている上、会社が定める募集事項の「払込金額」と「募集社債の金額」とが一致する必要はなく、償還されるべき社債の金額が払込金額を下回る定めをすることも許されると解される……などの点において、社債と一般の金銭消費貸借における貸金債権との間には相違がある。また、社債は、同法のみならず、金融商品取引法2条1項に規定する有価証券として同法の規制に服することにより、その公正な発行等を図るための措置が講じられている。
ところで、……利息制限法は、主として経済的弱者である債務者の窮迫に乗じて不当な高利の貸付けが行われることを防止する趣旨から、利息の契約を制限したものと解される。社債については、発行会社が事業資金を調達するため、必要とする資金の規模やその信用力等を勘案し、自らの経営判断として、募集事項を定め、引受けの申込みをしようとする者を募集することが想定されているのであるから、上記のような同法の趣旨が直ちに当てはまるものではない。今日、様々な商品設計の下に多種多様な社債が発行され、会社の資金調達に重要な役割を果たしていることに鑑みると、このような社債の利息を同法1条によって制限することは、かえって会社法が会社の円滑な資金調達手段として社債制度を設けた趣旨に反することとなる。
もっとも、債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し、社債の発行に仮託して、不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情がある場合には、このような社債制度の利用の仕方は会社法の予定しているものではないというべきであり、むしろ、上記で述べたとおりの利息制限法の趣旨が妥当する。
そうすると、上記特段の事情がある場合を除き、社債には利息制限法1条の規定は適用されないと解するのが相当である。

【コメント】
本判決は、原則として、社債の利息に利息制限法1条が適用されないことを判示した初の最高裁判決です。
例外として、「債権者が会社に金銭を貸し付けるに際し、社債の発行に仮託して、不当に高利を得る目的で当該会社に働きかけて社債を発行させるなど、社債の発行の目的、募集事項の内容、その決定の経緯等に照らし、当該社債の発行が利息制限法の規制を潜脱することを企図して行われたものと認められるなどの特段の事情」がある場合には、利息制限法1条の適用があるものと解されます。
どのような場合に、上記の「特段の事情」が認められるかは今後の事例の集積が待たれるところですが、本判決が、原則として社債の利息に利息制限法1条の適用がないことを明らかにしたことの意義は大きく、実務上参考になると思われます。

【参考条文】
利息制限法1条
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

執筆者
福本 洸太郎
アソシエイト/弁護士

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