第三者委員会(2)
先日のブログで、第三者委員会及び日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(以下「日弁連ガイドライン」といいます。)の概要を紹介しました。
今回は、日弁連ガイドラインの内容について、より詳しく解説します。
日弁連ガイドラインについては、そもそも第三者委員会の設置やその運営・権限について、法令に定めがない中で、第三者委員会が企業から独立した立場で、公平・公正な調査を行なう、という役割を果たすための自主的なガイドラインとして公表されたものです。
日弁連は、「依頼企業等からの独立性を貫き断固たる姿勢をもって厳正な調査を実施するための『盾』として本ガイドラインが活用されることが望まれる。」としています。
Q1 第三者委員会の活動内容の概要について教えて下さい
A1 第三者委員会は、企業等に不祥事が発生した場合において、①調査を実施し、②事実認定を行い、③これを評価して原因を分析します。④その上で、調査結果に基づいて、再発防止等の提言を行います。
このように、第三者委員会は、関係者の法的責任追及を直接の目的にする委員会ではなく、関係者の法的責任追及を目的とする委員会とは別組織とすべき場合が多いとされています。
Q2 第三者委員会の調査結果はどの範囲まで開示する必要がありますか。
A2 開示先は、不祥事に関係するステークホルダーとされていますが、開示先となるステークホルダーの範囲は、ケース・バイ・ケースで判断されるとされています。
すなわち、例えば、上場企業による資本市場の信頼を害する不祥事(有価証券報告書虚偽記載、業務に関連するインサイダー取引等)については、資本市場がステークホルダーといえるので、記者発表、ホームページなどによる全面開示が原則となろう、とされています。
また、不特定又は多数の消費者に関わる不祥事(商品の安全性や表示に関する事案)についても同様であろう、とされています。
他方、不祥事の性質によっては、開示先の範囲や開示方法は異なりうる、とされています。
なお、開示に関する下記の事項については、第三者委員会が企業等との間で、受任に際して定めることとされています。
①企業等は、第三者委員会から提出された調査報告書を、原則として、遅滞なく、不祥事に関係するステークホルダーに対して開示すること
②企業等は、第三者委員会の設置にあたり、調査スコープ、開示先となるステークホルダーの範囲、調査結果を開示する時期を開示すること
③企業等が調査報告書の全部又は一部を開示しない場合には、企業等はその理由を開示すること。また、全部又は一部を非公表とする理由は、公的機関による捜査・調査に支障を与える可能性、関係者のプライバシー、営業秘密の保護等、具体的なものでなければならないこと。
なお、第三者委員会は、必要に応じて、調査報告書(原文)とは別に開示版の調査報告書を作成でき、非開示部分の決定は、企業等の意見を聴取して、第三者委員会が決定するとされています。
このように、日弁連ガイドラインにおいては、第三者委員会の目的に照らし、開示については厳しい指針を示しています。
Q3 第三者委員会の委員の選定について教えて下さい。
A3 第三者委員会の委員数は、3名以上を原則とする、とされています。
第三者委員会が設置される場合、弁護士がその主要なメンバーとなるのが通例ですが、第三者委員会の委員となる弁護士は、当該事案に関連する法令の素養があり、内部統制、コンプライアンス、ガバナンス等、企業組織論に精通した者でなければならないとされています。
加えて、事案の性質により、学識経験者、ジャーナリスト、公認会計士などの有識者が委員として加わることが望ましい場合も多いとされています。
なお、企業等と利害関係を有する者は、委員に就任することができない、とされているところ、対象企業の顧問弁護士は、利害関係を有する者」に該当する、とされています。
また、企業等の業務を受任したことがある弁護士や社外役員については、直ちに利害関係を有する者に該当するものではなく、ケース・バイ・ケースで判断されることになろう、とされています。
Q4 第三者委員に対する報酬について教えて下さい。
A4 弁護士である第三者委員会の委員及び調査担当弁護士に対する報酬は、時間制を原則と する、とされています。この点、成功報酬型の報酬体系の採用については、企業等が期待する調査結果を導こうとする動機につながりうるので、不適切な場合が多いとされています。
したがって、第三者委員会は、企業等に対して、その任務を全うするためには相応の人数の専門家が相当程度の時間を費やす調査が必要であり、それに応じた費用が発生することを、事前に説明しなければならない、とされています。
近年、コンプライアンスに対する意識の高まりに伴い、企業等の活動の適正化に対する社会的要請はますます高まっています。
このような状況において、企業等の不祥事が発生した場合、第三者委員会が果たすべき役割はより大きなものになっていくと考えます。
第三者委員会を設置すべきかどうか、また設置すべきとしてどのように進めればよいのかその人選や段取りを含めて、経験者から知見を得た方がよいことは間違いありません。
当事務所では、第三者委員会に関するご相談もお受けいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
参考:日本弁護士連合会 企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン
(文責:三村雅一)