企業が従業員に提出してもらうべき誓約書の内容(その4)
以前、企業が従業員に提出してもらうべき誓約書の内容について検討しました。
その1
その2
その3
今回、さらに付け加えておいた方がよいと考えたことを、今回備忘録的にエントリーにしておきたいと思います。
それは、会社の従業員に対する調査権です。もう少し具体的に言えば、従業員が業務のために利用する机の引き出しやロッカー、パソコン等の電子機器や記録媒体について、会社は、いつでも管理している従業員に断ることなく調査できる旨の内容等です。場合によっては、調査権者を会社の親会社やグループ会社、それらの監査役等と広く設定しておくことや、所持品等の調査を行い得る場合も含めることも検討しても良いかもしれません。
本来、会社が業務のために従業員に使用許諾している備品や電子機器等は、会社が管理・所有するものですので、原則としては、いつでも調査できるはずです。とはいえ、従業員のプライバシー権等の人格権の問題もあり、所持品検査等の侵害性が強い方法による調査は、違法となる可能性があります。判例では、所持品検査等の調査については、合理的な理由があること、妥当な方法と程度であること、制度として画一的に実施すること、就業規則等の明示の根拠があること等が適法と言えるための条件と考えられています。
より一般化して考えると、従業員に対する調査については、調査の態様や程度を勘案した上で、(i)必要性、(ii)相当性、(iii)手続的適正の3つの観点から判断されることになると考えます。
そこで、(iii)の手続的適正を満たすために、予め従業員からの誓約書に、会社の従業員に対する調査権を規定しておくことが良いのではないだろうか、ということです。
誓約書の作成について検討されている場合、会社がいつどのような範囲で調査できるのかを明確にして誓約書に規定することを、ご検討いただければ幸いです。
p.s. 実は、このエントリーのきっかけとなったのは、山口利昭先生の『内部告発・内部通報 -その「光」と「影」- (守れるか企業の信用、どうなる通報者の権利)』という本の出版記念講演です。この本では、過去事例や判例も多く掲載されており、会社のコンプライアンスを担当する部署の方や、会社のヘルプラインを担当する社外の弁護士にも必携かと思います。