ベンチャー法務の部屋

第三者委員会

2020.11.03

テレビや新聞などの報道で、「第三者委員会」という言葉を耳にすることが増えました。

記憶に新しいところでは、関西電力の役員らが原子力発電所を巡って多額の金品を受け取っていた問題、日大アメフト部におけるタックル問題などで第三者委員会が設置され、調査が行われ、調査報告書が公表されています。

第三者委員会を設置する大きな目的は、企業や官公庁、地方自治体、独立行政法人あるいは大学、病院等の法人組織において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等が発生した場合に、同行為等について調査・検証を行うことで、不祥事によって失墜してしまった社会的信頼を回復し、再発を防止することにあります。

このような目的の実現のためには、なれ合いのおそれのある内部の調査・検証ではなく、企業等から独立した第三者である専門家による、客観性・中立性・専門性が確保された調査・検証を行うことが、より相応しいことから、第三者委員会が設置されることとなります。

第三者委員会は、法令によって設置が義務付けられているものではなく、あくまで企業等が任意に設置しているものです。また、第三者委員会の運営や権限に関しても法令に定めがあるわけではなく、第三者委員会は調査等について強制的な権限を持っているわけでもありません。なお、名称についても、「第三者委員会」という名称ではなく、「調査委員会」、「独立調査委員会」、「特別調査委員会」などと名付けられている場合もあります。

前述のとおり、第三者委員会は、設置された目的を実現するためにも、企業等から独立した立場で、公平・公正な調査、検証をすることが求められているものの、過去に設置された第三者委員会の中には、調査が杜撰であったり、企業等からの独立性が十分に確保されていないなどと批判を受けることもありました。

そのような状況を受け、日本弁護士連合会は、2010年7月に「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を公表しました。(なお、同ガイドラインは2010年12月に改訂されています)。

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100715_2.pdf

日弁連ガイドラインには、(i)第三者委員会の活動について、事実調査・認定・評価や調査報告書の開示、再発防止策等の提言に関する指針、(ii)第三者委員会の独立性・中立性についての指針、(iii)企業等の協力についての指針、(iv)公的機関とのコミュニケーションに関する指針、(v)委員等についての指針などが定められています。

日弁連ガイドラインには、拘束力はないものの、現在の第三者委員会のほとんどは、日弁連ガイドラインに準拠したものであるか、少なくとも日弁連ガイドラインを意識したものとなっていると言われており、2018年9月7日に公表されたスルガ銀行株式会社の調査報告書においても、当該第三者委員会は日弁連ガイドラインに準拠して構成されたものであり、その運営・調査の実施・調査報告書の作成等が日弁連ガイドラインに準拠したものである旨記載があります。

次回以降、引き続き、同ガイドラインの内容を少し詳しく説明したいと思います。

(文責:三村雅一)

執筆者
S&W国際法律事務所

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