古物営業の許可について(3)
前回、前々回と、古物営業法の趣旨や概要、リサイクルショップ、フリーマーケット、バザー、メルカリ等のフリマアプリと古物営業法の関係について紹介してきました。
今回は、平成30年4月25日に公布された古物営業法の概要について紹介します。
第1 はじめに
前回のブログでも紹介したように、古物営業の態様は変化し、内閣規制改革ホットラインには、都道府県単位での許可の見直し(古物営業法第3条第1項、第2項)、営業の制限についての緩和(古物営業法第14条第1項)について要望が寄せられました。
それを受け、警察庁は古物営業の在り方に関する有識者会議を開催し、平成29年12月21日に古物営業の在り方に関する報告書をまとめました。
こういった背景の下、平成30年3月6日に古物営業法の改正案が閣議決定され、同年4月25日には「古物営業法の一部を改正する法律」(以下「新法」といいます。改正前の古物営業法を「旧法」といいます。)が公布されました。
第2 新法の概要
1 都道府県ごとの許可制度について
(1) 旧法下における制度の概要
旧法下の制度では、古物営業を行うためには、都道府県単位での許可を受ける必要があるとされていました(旧法第3条第1項、同第2項)。
(2) 不都合性
前述のとおり、全国展開を図る古物商にとっては、都道府県ごとに許可が必要となることから、時間と費用がかかるという問題がありました。
(3) 新法
新法においては、主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の許可を受ければ、その他の都道府県に営業所等を設ける場合には届け出で足りることとされました(新法第3項第1項)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から2年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条)。
2 営業の制限について
(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、古物商は、営業所又は取引の相手方の住所等以外の場所で、買受け等のために古物商以外の者から古物を受け取ることができないとされていました(旧法第14条第1項)。
これは、営業所又は取引の相手方の住所等以外の場所において古物の取引をする場合、法に定める各種義務(帳簿記載義務や本人確認義務)の確実な履行が期待できないために設けられた規定です。
(2) 不都合性
百貨店や集合住宅のエントラス等でのスペースを活用したイベント会場での受け取りができないため、古物商にとってはビジネスチャンスが狭まっており、また消費者にとっても古物を売却できる場所の選択肢が狭まっているという問題がありました。
(3) 新法
事前に公安委員会に日時・場所の届出をすれば、仮設店舗においても古物を受け取ることができることとされました(新法第14条第1項但書)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から6ヶ月を超えない範囲内とされました(新法附則第1条但書)。
3 簡易取消し制度について
(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、所在不明である古物商の許可を取り消すためには、3ヶ月以上所在不明であることを都道府県公安委員会が立証した上で、聴聞を実施する必要がありました。
(2) 不都合性
現在、約77万件の許可件数がある中で所在不明である古物商や、既に廃業しているにもかかわらず返納されていない許可がある一方で、許可を取り消す手続に時間がかかりすぎるという問題がありました。
(3) 新法
古物商等の所在を確知できないなどの場合に、公安委員会が公告を行い、30日を経過しても申し出がない場合には、許可を取り消すことができることとされました(新法第5条第2項、同条第3項)。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から2年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条)。
4 暴力団排除について
(1) 旧法下における制度の概要
旧法下における制度では、禁固以上の刑や一部の財産犯の罰金刑に係る前科を有すること等を欠格事由として規定し、該当する者は許可を取得できないとされていましたが、暴力団員は欠格事由として明記されていませんでした。
(2) 不都合性
盗品売買の防止という法目的からは、暴力団排除は当然であるにもかかわらず、暴力団排除が法に明記されていなかったという問題がありました。
(3) 新法
暴力団員やその関係者、窃盗罪で罰金刑を受けた者を排除するため、許可の欠格事由として、「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」(新法第4条第3号)、「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第12条若しくは第12条の6の規定による命令又は同法第12条の4第2項の規定による指示を受けた者であって、当該命令又は指示を受けた日から起算して3年を経過しないもの」(新法第4条第4号)が定められました。
なお、施行期日は、公布の日(平成30年4月25日)から6ヶ月年を超えない範囲内とされました(新法附則第1条但書)。
(文責:三村雅一)