ベンチャー法務の部屋

会社が株式公開を目指さない理由

最近、「企業価値5600億円 米スラックが株式公開しない理由」という記事がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32237140W8A620C1TJC000/

Slackは、昨今のベンチャー企業では、使っていない方が珍しいくらいに、浸透しているビジネス用のチャットツールです。

私も、所内外を問わず、いろいろな場面で活用させていただいています。

そのSlackのCEOが、当面、株式を公開しないとのことです。

通常、ベンチャー企業が、VCや投資家から、新株発行により資金を調達する際には、当該株式について、将来、上場によって公開されることを目指すと宣言します。IPOによって、株式が公開されない限り、VCや投資家にとっては、投下した資本を回収する手段がないからです。

しかしながら、いまや世界中のビジネスシーンで利用されるようになった、Slackは、ユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の有力未上場企業)であり、上場しなくても、その株式を保有したいという投資家・資産家は、列をなしているのでしょうから、労力のかかる(=めんどくさい)IPOは、しなくても問題ないでしょう、ということかもしれません。

私が過去に書いたブログで、会社の株式の未来は、大きく分けて4つの未来しかないと書いたことがあります。

「会社の未来は4つしかない」
https://www.swlaw.jp/%e4%bc%81%e6%a5%ad%e6%b3%95%e5%8b%99/127/

(未来1) 株式公開(IPO)
(未来2) M&A(買収される)
(未来3) 保有され続けて、相続の対象となる。
(未来4) 会社の清算により、残余財産分配請求権に転化する。

Slackのように、有力な投資家が保有し続けて、未上場のまま、維持されていくケースもあるかもしれません。この場合、個人株主については、(未来3)ですね。

Slackのように、未上場のまま有力な投資家が保有し続ける場合、投資家は、未上場のまま、会社に配当を求めるのかもしれません。

栄枯盛衰は世の常ですので、上場できるうちに、上場した方がよいという意見もあるとは思いますが、如何でしょうか。
SlackとSlackの投資家の未来は、どうなるでしょうか。

執筆者
S&W国際法律事務所

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