不祥事・不正事案がIPO準備に及ぼす影響と対応方法
IPO準備期間には、IPOに向けて成長の勢いが強調されやすく、また、組織としての成熟性が高くない場合が多い等の理由から、不祥事・不正事案が発生しやすい状況にあるといえます。
以下では、そのような不祥事・不正事案がIPOに及ぼす影響を説明したうえで、不祥事・不正事案を未然または早期に発見するための方法、及び、発見された事象に対する望ましい対応について説明します。
1 不祥事、不正事案がIPOに及ぼす影響
会社における不祥事・不正事案には、品質不正、個人情報・機密情報の漏洩、粉飾決算・架空取引等の会計不正、ハラスメント事案、または、役員による不適切発言や従業員による犯罪行為等、幅広い類型が存在します。
上場審査時に不祥事・不正事案が発見された場合、これが原因で上場審査の阻害要因となり、少なくとも、その時点でのIPOを断念せざるを得ない場合もあります。
また、上場後に不祥事・不正事案が発見され、その結果、上場廃止となるケースもあります。
例えば、グレイステクノロジー株式会社は、IPOの数年後に、IPO前からの架空売上の計上や売上の前倒し、架空外注費の計上等が発見されたとして、上場廃止となりました(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1191119_1527.html)。
これらのことから、不祥事・不正事案を早期または事前に発見し、適切に対応することが非常に重要であることが分かります。
2 不祥事・不正事案の発見
不祥事・不正事案が発見される端緒は、外部のものとしては、取引先からの情報提供、警察や関係省庁等による捜査・調査等、または、週刊誌による報道等があります。内部からのものとしては、内部通報制度や部下から上司への報告等があります。
上記1記載のように、早期または事前に発見するという観点からは、社内アンケートを実施するという方法も考えられます。外部からの情報提供はともかく、社内アンケートや内部通報制度によって不祥事・不正事案の端緒が発見されることは、制度が適切にワークしていることの証左であるといえますので、肯定的に評価すべきです。また、社内アンケート等を実施して、まったく不祥事・不正事案が発見されないとすれば、かえって不自然であり、何らかの不祥事・不正事案は発見されることが当然と考えて、取り組むべきです。
不祥事・不正事案を適切に把握するためには、法務デューデリジェンス、会社監査、内部通報制度や社内アンケート等を実施・充実させることが考えられます。特に、IPO直前に不祥事・不正事案が発見されると、IPO時期がずれてしまう可能性が高まりますので、早期に、自主的に法務デューデリジェンス等を実施することが望ましいといえます。
また、同様に、風通しがよく、自由に意見を述べることができる空気や社内文化を醸成することも非常に重要です。
3 対応方法
不祥事・不正事案の端緒が発見された場合、調査を実施して事実関係を明らかにしたうえで原因を分析し、再発防止策を検討・提言する必要があります。
この一連の作業を、どのようなメンバーが担当するのかについては、慎重に検討する必要があります。
選択肢としては、
- 会社内の担当部署・担当者がこの調査等を行う
- 社外取締役や監査役が中心的な役割を担いつつ、弁護士や公認会計士等の専門家と協働する
- 弁護士や公認会計士等の外部専門家のみで行う
といったパターンがあります。
これらの業務を行うチームについて、社内調査委員会、調査委員会、第三者委員会、または独立調査委員会等、構成員の属性によって適宜の名称がつけられています。
重要なことは、不祥事・不正事案の規模や、社会的影響の度合い、及び、企業の属性(上場しているか否か、広く消費者に対するブランド・イメージが重要なビジネスモデルであるか否か等)等を勘案して、適切な調査体制を構築することです。
調査結果が出たあとは、不祥事・不正事案の経緯、動機、及び背景等を踏まえた再発防止策を徹底することになります。必要に応じて、関係者に対する懲戒処分も実施することもあります。再発防止策として、一通りの社内研修を実施して終了することなく、再発防止の効果が発揮できているかを継続的にフォローアップしていくことが重要です。
4 最後に
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