ライセンス契約の基本~ライセンス契約においてチェックするべき12のポイント~

1 ライセンス契約とは

 ライセンス契約とは、特許・意匠・著作物・商標などの知的財産権等の実施・使用等を、第三者に許諾する内容の使用許諾契約です。許諾する側を「ライセンサー」、許諾を受ける側を「ライセンシー」といいます。

 主に知的財産権がライセンスの対象となりますが、知的財産権として保護されているか不明確なものであっても、許諾の対象となることはあります。ライセンサーはライセンス料収入を得られる一方、ライセンシーはライセンサーの技術・著作物・商標などを利用して利益を上げることができます。

 スタートアップ企業でも、ライセンス契約を締結することは少なくないため、ここでは基本的なチェックポイントに絞って解説します。

2 ライセンス契約のポイント

(1)ライセンスの対象

① 対象

 ライセンス契約においては、何がライセンスの対象であるかを明確にする必要があります。特許や商標といった登録のある知的財産権であれば、特許番号等で特定できますが、著作権の場合や出願前の権利、ノウハウについては、特定に工夫が必要な場合があります。

② 利用態様・目的

 ライセンスにおいて、利用態様や目的を限定することは少なくありません。利用可能となる端末を限定する、PoC目的に限定する、商用利用を不可又は有償とする等です。

③ ライセンス期間

 ライセンス契約において、ライセンス期間は必須の要素です。期間が不明確であれば、永続したものと判断される可能性も否定できませんので、合理的な期間が設定されているか確認が必要です。

④ テリトリー

 地理的な範囲を限定するかどうかも、検討が必要です。特に、特許や商標は、必要となることが多いです。また、webでの利用は、地理的な範囲とは別に検討を要することがあります。あるキャラクターを付した商品を日本国内で販売するライセンスを受けた or 与えた場合に、ウェブサイトを通じて、日本の消費者に販売できると解してよいかは明確にした方がよいでしょう。現代においては、ウェブサイトを通じた取引は、そうでない取引に比べ、防止措置を施したとしても、海外への販売が容易であるためです。

(2)独占 or 非独占

 独占的なライセンスであるか、非独占的なライセンスであるかは、ライセンス契約にとって極めて重要な要素です。

 特に独占的なライセンスとして設計する場合は、最低使用料の設計をしなくてよいか、独占権を解除する要件を設定しなくてよいか、自己実施を許容するか等といった点も含めて、総合的に検討して、定めておく必要があります。

(3)再許諾権の有無

 再許諾(サブライセンス)を許容するか否かもライセンス契約にとって重要な要素です。

 再許諾は許可しないことが多いと思われますが、ケースによっては許可することで、ライセンサーにとってもライセンシーにとってもビジネスの広がりを目指すということはあり得るところです。

(4)対価

ライセンス契約の対価の設計は多種多様です。

  • 月額や年額で定める定額方式
  • 売上や販売数に料率をかける方式
  • 利益に料率をかける方式
  • 最低実施料や導入手数料

基本的なもので、上記の定め方があり、これらを組み合わせる場合もあります。

(5)知的財産権の保護

 知的財産権、特に特許や商標は、無効であるとして、争うことが可能ですが、ライセンシーから争われることはライセンサーにとっては最も避けたいことの1つです。そのため、ライセンシーの不争義務を定めることは少なくありません。

 また、第三者から、権利の存在等について、紛争を提起された場合の取扱いも定めておいた方がよいでしょう。

(6)知的財産権の維持

 前項の知的財産権の保護とは異なり、こちらは対象とされた知的財産権を維持すべきライセンサーの義務として定められることがあります。

 ライセンサーが、権利維持に必要な合理的な努力、特に特許料等の支払いをする義務として定めます。

(7)遵守するべき各種義務

 ライセンシーによるライセンサーに対する報告義務、(特に、対価が売上や販売数に料率をかける方式や利益に料率をかける方式の場合)帳簿等の保管義務等が定められることが多いです。

(8)競業禁止規定

 ライセンサーは、競業禁止を求めることが多いですが、ライセンシーにとっては、その業界に関する業務を全面的に展開できなくなるため、受け入れる場合は極めて慎重に検討した方がよいでしょう。

(9)免責

 ライセンサーの免責が規定されることが多いです。

 ライセンスによって、ライセンシーに(ライセンシーが期待している)何らかの利益が生じたりすること等を保証しない旨の規定や損害賠償額の上限設定です。

 ライセンシーには、ライセンス契約を締結することで、ある程度の売上を見込む、自社開発アプリケーションに組み込むことでサービスを完成されるといった目的がありますが、ライセンサーは、そのような目的が達成されるかは保証できないとして免責を求めることがあります。

 仮に、このような免責規定がなかったとしても、通常は、ライセンシーが、目的不達成の責任をライセンサーに求めることはできないと考えられますが、契約締結までの説明において保証したかのような言説が用いられていることで誤解が生じている可能性はあり、そのような誤解が生じないような工夫として定められることがあります。

(10)期間・解除

 ライセンス期間と契約期間は同じであることも多いですが、ライセンスが複数に渡る場合などは、分けることがあります。

 また、解除事由は、一般的な解除事由のほかに、任意解除権を認めるか否かといった論点はかなり重要な問題です。ライセンシーにとって、事業展開に重要なライセンスが安易に解除されるとなるとリスクが大きく、IPOに際して、又は上場後に、有価証券届出書等でリスク情報として開示しなければならない場合があります。

(11)終了時の取扱い

 ライセンス契約の終了は、展開済みのアプリケーション、仕掛品やサブライセンスに影響を及ぼします。展開済みのアプリケーション、仕掛品やサブライセンスがある場合は、終了後にどのような影響が生じるかを明確にした方がよいでしょう。

(12)その他

 物の引渡しを伴う場合は、その物に関する引渡しや検収、危険負担、所有権移転、契約不適合責任といった規定を定めたほうがよい場合があります。また、ライセンシーにとって、事業展開に重要なライセンスである場合、譲渡禁止やライセンサーの倒産に備えた規定を設けておくことも考えられるでしょう。

3 一般条項

 上記の規定のほか、不可抗力、秘密保持、通知、完全合意、分離可能性、存続規定、反社会的勢力の排除、準拠法、裁判管轄といった規定について、必要なものが定められているか、確認した方がよいでしょう。

4 まとめ

 今回は、ライセンス契約を締結の際にチェックするべき12の基本ポイントを中心に、チェックポイントをお伝えしました。

 今のビジネスにおいては、ライセンス契約は、コンピュータソフトウェアのライセンス契約、キャラクターライセンス契約や、フランチャイズに付随した商標ライセンス契約、技術的な特許ライセンス契約、プログラムのライセンス契約、クロスライセンス契約などと、多種多様な場面で登場し、スタートアップにとっても避けて通れない契約となっています。

 ソフトウェア開発においては、商用利用できるオープンソースライセンスを活用する場面は多く、その場合には、具体的なライセンス内容を確認する必要があります。また、アプリケーション等において、活用したライセンスを表示する義務が生じる場合があり、このような場合には、具体的にライセンスを受けたものを列挙しておく必要が生じます。

 すべてのライセンス契約において、上記の基本ポイントの全てを検討しなければならないというものではありませんが、重要なライセンス契約では特にチェックしたほうがよい項目を挙げました。

 具体的な契約の作成やチェックが必要な場合は、将来のリスクヘッジのために、弁護士によるチェックを経ることが望ましいです。

 当事務所でも、ライセンス契約の作成やチェックを承っていますので、ご用命があれば、お問合せページからご連絡ください。

執筆者
マネージング・パートナー/弁護士
森 理俊

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