国際法務の部屋

ビジネスと人権に関する取組事例集について

2021.11.16

外務省は、令和3年9月に、「ビジネスと人権」に関する取組事例集(以下「取組事例集」といいます)を発表しました。

外務省のウェブページによると、この取組事例集は、我が国では、「ビジネスと人権に関する指導原則」や人権デュー・ディリジェンス等が広く企業に十分認識されているところまでは至っていないと考えられることから、人権デュー・ディリジェンスについて、より具体的なイメージを提供するとともに、我が国における人権デュー・ディリジェンスの導入促進の一助とするために作成されています。

取組事例は、大きく、

(1)人権方針の策定

(2)人権デュー・ディリジェンスの実施

(3)救済メカニズムの構築

の観点から、各企業の取組事例をまとめて紹介しており、非常に参考になります。

具体的には、

(1)人権方針の策定については、「ビジネスと人権に関する指導原則」で人権方針の策定に際して要求される、①企業の経営トップが承認していること、②社内外から専門的な助言を得ていること、③従業員、取引先及び、製品やサービス等に直接関与する関係者に対する人権配慮への期待を明記すること、④一般公開され、全ての従業員や、取引先、出資者、その他関係者に向けて周知されていること、⑤企業全体の事業方針や手続に反映されていることの各ポイントについて、具体例をポイントを絞ってまとめてくれており、中小企業を含めて、今後人権方針の策定をする際に、参考になりそうです。

(2)人権デュー・ディリジェンスの実施の際に必要な下記①から④の視点に対応する形で、下記のような取り組み例が紹介されており、人権デュー・ディリジェンスを行う際の参考になります。

①人権への悪影響の評価

→第三者・外部専門家や、国際基準、国際NGOが提供している情報等を活用して人権リスク評価を行い、人権リスクが顕在化しやすい分野や国・地域、重点課題等を特定し、その上で、それらの分野や課題について重点的に監査等を実施することで、課題を更に特定

②調査結果への対処

→問題が発現した場合に措置を実施したり、取引先に対して改善を求める

③対応の追跡調査

→定期的なモニタリング

④対処方法に関する情報発信を実施すること

→取組を、各社ウェブサイトへの公表や、各種報告書の発行等を通じて、情報公開

(3)救済メカニズムの構築については、社内ホットライン、社外ホットライン、取引先向けホットライン、第三者による苦情受付窓口の整備、多言語対応窓口の設置などの取組事例が紹介されています。

また、取組事例では、大企業による取組事例を中心として紹介しているものの、「国連の指導原則は、その規模や業種にかかわらず、あらゆる企業に人権の尊重を求めています」として、中小企業の取組事例も紹介されています。

このように外務省が公表した、ビジネスと人権に関する各企業の取組事例からもわかるように、今後、企業の規模を問わず、ビジネスと人権に関して継続的な取組を行うことが求められます。

弊所では、ビジネスと人権に関する研修(新入社員・管理職研修、全従業員を対象としたEラーニング研修等)、経営層等を対象にしたビジネスと人権に関する講習会、取引基本契約書等における人権条項の整備、人権方針作成のサポート、人権デュー・ディリジェンスのアレンジなどSDGs関連サービスを幅広く提供しております。ぜひ、お気兼ねなくお問い合わせください。

執筆者
河野 雄介
マネージングパートナー/ニューヨーク州弁護士/弁護士

お問い合わせ
メールでお問い合わせ
お電話でお問い合わせ
TEL.06-6136-7526(代表)
電話/平日 9時~17時30分
(土曜・日曜・祝日、年末年始を除く)
page top