中小企業に対する支払保障条例
中国の国務院は、2020年7月15日、「中小企業への代金支払保障条例」を公布しました(2020年9月1日から施行されています。)。
本条例は、「公的機関、公的事業法人及び大企業の中小企業への代金支払を促進、中小企業の合法的権益を保護し、経営環境を最適化する」(第1条)ことを目的としています。公的機関、公的事業法人及び大企業(以下「大企業等」といいます。)から中小企業に対する支払いについての規制を設けるという意味で、日本における下請代金支払遅延等防止法(下請法)と類似しています。
本条例第3条では、中小企業の定義について、国務院が承認した中小企業区分基準に基づくとされており、大企業は中小企業以外の企業をいうと規定されています。当該中小企業区分基準では、業種別に、売上、従業員数、及び、総資産等を基準に決定されることになります。例えば、卸売業では、従業員数が200人より少ないか、もしくは、売上が4億人民元より少なければ中小企業に分類されます。
本条例では、大企業等が中小企業と取引するに際し、原則として商品、工事、またはサービスを提供した後30日以内の支払義務や、中小企業への代金支払が遅延した場合の遅延利息(約定がなければ1日あたり0.05%)の支払義務を規定しています。
他方、中小企業においても、大企業等と契約を締結する際に、自らが中小企業に属することを積極的に告知することを義務付けています。
本条例は、違反した場合のサンクションに関する規定が必ずしも明確ではありません。また、施行されて間もないこともあり、実務における運用状況が不透明であることから、今後の実務の状況を注視する必要があります。
日本においては、下請法に関する社内マニュアルの整備といった対応を既にされている企業も多いと思います。本条例は、実務に与える影響が小さくないと考えられますので、中国にグループ会社が存在する企業においては、本条例の理解と対応指針の策定が必須であるといえます。