香港の政治不安
2019年12月17日付け日本経済新聞電子版で、「中国習主席、早期の秩序回復指示、香港行政長官と会談」との記事がありました(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53419380W9A211C1FF1000/)。
習近平氏としては、先日、香港区議会選において民主派が圧勝したことを受け、表面的には厳格な姿勢を強調しないものの、引き続き、政府側が暴徒化していると表現している団体に対する取り締まりの強化を図っていくものと思われます。
この騒動は、もとはといえば、2019年4月、香港において、「逃亡犯条例」の改正案が提出されたことに端を発するものです。この改正案は、香港から、中国大陸等に刑事事件の被疑者等を引き渡すことが容易になること等を内容とするものでした。香港人としては、同改正によって、香港における自由が制約されると感じ、強く反発したものと言われています。
この一連の騒動に関し、さまざまな意見を直接または間接に見聞きしましたが、私なりのまとめとしては、①そもそも、香港人としては、英国から中国への返還の後、それまで享受していた自由が次第に制限されるといった政治面での不満が存在した。
また、②大陸からとめどなく流入する人及び資金によって、不動産価格に代表される物価の急激な上昇に対する経済面での不満が、相当程度蓄積していたところ、「逃亡犯条例」をきっかけに爆発したと感じています(例えば、私の香港の友人に、「香港で家を買うのは(経済的に)難しいみたいだね」と言ったところ、「難しくない。不可能だ。」と返されたこともあります。)。
このような背景が存在することもあり、「逃亡犯条例改正案」の撤回だけでは民衆が満足するはずはなく、普通選挙(香港政府トップの行政長官の直接選挙を意味します。現在は、限られた選挙委員会によって選ばれており、中国の意向が反映されるものになっていると言われています。)の実現等も要求されるに至っています。
この点、中国憲法第3条では、「全国人民代表大会及び地方各級人民代表大会は、すべて民主的選挙によって選出され、人民に対して責任を負い、その監督を受ける。」と規定されているものの、実質的には、(他の先進国が観念する)民主主義は採用されていません。
また、中国大陸における民主化活動の厳しい歴史が存在することからも、北京の中国政府における民主化に対する姿勢がどのようなものか、想像に難くありません。したがって、中国が普通選挙の実現を認めることは、現在の中国の政治制度の否定に等しいことから、絶対にないでしょう。
(一部の)デモ側の行動が暴徒化していたり、警察による実弾の使用が増えていたりと、香港では、厳しい状況が収束していません。私も、つい先日、香港での会議が予定されていたのですが、深センでの会議に変更となってしまいました。
ビジネスでもプライベートでも、香港で、良い思い出がたくさんある1人の日本人として、少しでも犠牲が少ない方法で、1日でも早く、この問題が解決することを望んでやみません。
(文責:藤井宣行)