国際法務の部屋

SDGsと企業活動①

2019.10.16

1 SDGsとは

皆さんは、SDGsという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

言葉を耳にしたことはなくても、カラフルなロゴやバッジを目にしたことはあるのではないでしょうか。

今回は、SDGsとは何か?を説明すると共に、企業とSDGsの関係についての概要を説明します。

まず、SDGs(エスディージーズ)とは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の頭文字を取った略称です。

SDGsは、持続可能な世界を実現するための17の目標(Goals)です。17個のゴールがあることから、Goals=Gsとされています。この17の目標については、2015年9月25日の第70回国連総会で採択された、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。

すなわち、SDGsとは、2030年に向けて、全世界が持続可能な発展を遂げるために達成すべき共通の国際目標といえます。(日本語仮訳版

また、SDGsには、上記17の目標のもと、169のターゲットを置いています。この169のターゲットは、SDGsの17の目標を達成するために具体的に実現すべき内容を示したものであり、SDGsの具体目標とも呼ばれています。

ここで、「持続可能な開発」とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発」のことを言うとされています。経済的に発展すること、物やサービスを中心とした暮らしが豊かになることは必要だけれど、それは「持続可能」なものではなければならないということです。

2 SDGsと企業

「持続可能な開発」というテーマについては、SDGsにおいて初めて議論されたわけではなく、以前から繰り返し議論され、目標設定されてきたものでした。

それでは、SDGsとこれまでの目標との大きな違いは何でしょうか。

それは、これまでの目標は、国やNGOが主体になるものが多く、民間の一人ひとりが当事者意識を持ちにくいということがあったところ、SDGsは、民間企業による取り組みを求めた点が大きな違いであると言われています。

このように、SDGsは企業経営においても決して避けて通ることはできない目標となっています。

すなわち、時代の変化に伴い、2000年代初め頃から、企業は、社会に対して責任を負う存在であるとして、ESG=環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)への配慮を企業に対し求めるさまざまな関係者の動きが世界的に強まるようになりました。そして、この動きは、投資の判断においても広がり、投資判断にESGの要素を考慮するESG投資は、2006年に国連責任投資原則(PRI)が提唱し、グローバルでは年金基金などの大手機関投資家によって採用されるようになりました。

このように、企業にとっては、利益のみを重視するのではなく、ESG、持続可能性を理解し経営に入れ込まなければ、それが企業経営にとって大きなリスクとなる、そういった時代が訪れるようになりました。

SDGsは、こういった時代の中で、企業経営にとって指針になりうる国際的な共通言語として重要な意味を持つと言われています。

これからの企業経営においては、社会・環境への要請の更なる高まり、ICTの進化、企業のグローバル展開に伴って生じる、海外拠点やサプライチェーン、バリューチェーンにおける諸問題(労働、人権、環境、贈収賄など)への対応など、内外の激しい変化の中で革新的な対応が求められるようになっていきます。その対応指針として、SDGsは大きな意味を持つことから、企業に携わる方々、そして企業法務に携わる我々弁護士も、SDGsの内容をしっかりと理解しておかなければなりません。

次回は、SDGsが現在の日本でどのように位置づけられているのか、企業がSDGsにどのように取り組んでいるのか、その具体例について紹介します。

執筆者
三村 雅一
マネージング・パートナー/弁護士

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