中国における電子送達の普及について
中国民事訴訟法第87条1項では、民事訴訟における訴訟資料の送達について、「人民法院は、送達を受けるべき者の同意を経て、ファクシミリ、電子メール等の送達を受けるべき者の受領が確認できる方式によって訴訟文書の送達を行うことができる。但し、判決書、裁定書、調解書は除く。」と規定されています。
そして、2017年7月19日に公布された、最高人民法院の「民事送達業務の強化に関する若干意見」によると、当事者の同意があれば、電子送達が可能であり、電子送達の例として、ファックスや電子メールに加えて、中国における通信手段として一般的に普及している「微信」(WeChat)による送達も可能であると明記されています。
さらに、この最高人民法院の民事送達業務の強化に関する若干意見を受けて、北京市高級人民法院が発布した「送達業務に関する規定の集約を推進するための規定(試行)」では、①第2条において当事者には優先的に電子送達を選択させること、②第3条では北京法院における送達を集約するプラットフォームを作ること、③第5条及び第6条において、訴訟の第一審、第二審及び執行手続における送達に利用するための送達住所確認書の統一的なひな形を人民法院が作成し活用すること、④第19条において、当事者が電子送達に同意して送達住所確認書において選択した「微信」(We Chat)や電子メール、ファックス等の方法で電子送達が行われるが、判決書、裁定書、調解書は電子送達の対象とはならないこと等が規定されています。そして、第5条に規定されている送達住所確認書の具体的なひな形が、添付資料としてつけられており参考になります。
中国においては、北京以外の都市においても電子送達を優先する動きがみられ、今後は訴訟当事者の同意を前提として、訴訟文書の電子送達が普及していくものと思われます。
文責:河野雄介