中国企業とのライセンス契約と源泉徴収
日本企業が、中国企業に対し、特許やノウハウ等をライセンスして、ロイヤリティを受領する契約を締結する場合があります。今回は、こういった契約に関する注意点をご紹介します。
まず、日本企業が中国企業からロイヤリティを受領する契約を締結する場合、当該日本企業が中国国内に拠点等を設定していない場合等は、当該日本企業は非居住企業になります(中国企業所得税法2条3項(日本の法人税法に相当するものです。以下「法」といいます。)。
非居住企業の場合、中国において納税義務が生じる対象は、中国での国内源泉所得であり(法3条3項)、この事例において日本企業が受領するロイヤリティは中国での国内源泉所得に該当します(中国企業所得税法実施条例7条)。
そして、非居住企業が中国での国内源泉所得を取得した場合には、支払者に源泉徴収義務を課しています(法36条)。
したがって、上記のケースでは、日本企業が受領するロイヤリティは、中国での源泉徴収の対象となります。
この場合、ライセンス契約書等に、「ロイヤリティの金額は1000万円とする」といった規定がなされていた場合、後日、紛争が生じることがあります。すなわち、源泉徴収が20%だと仮定すると、日本企業に着金すべき金額が800万円なのか、1000万円なのかについて、当事者間で意見の相違が生じることがあります。
契約書の「1000万円」との記載について、一方は、源泉徴収前の金額であると主張し、他方は、源泉徴収後の金額であると主張することがあります。こういった紛争を避けるために、契約書作成段階において、後日、当事者間において見解の相違が生じないように、「関連法令が要求する源泉控除後の金額1000万円を支払う」といった適切な文言を選択する必要があります。
(文責:藤井宣行)
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