人権デュー・ディリジェンスについて
先日、神戸市、ひょうご・神戸国際ビジネススクエア(神戸市海外ビジネスセンター、ひょうご海外ビジネスセンター、ジェトロ神戸)及び弊所が主催する、SDGsビジネスセミナーで、弊所の三村弁護士とともに、「企業にとって必要なSDGsと法務と取り組み事例の紹介」について講演致しました。
このセミナーでも取り上げさせていただいたのですが、企業にとって、人権デュー・ディリジェンス(人権への影響を特定し、予防し、軽減し、そしてどのように対処するかについて説明するために、人権への悪影響の評価、調査結果への対処、対応の追跡調査、対処方法に関する情報発信を実施すること)の重要性が高まってきています。
というのも、令和2年10月16日、関係府省庁連絡会議において、企業活動における人権尊重の促進を図るため、「ビジネスと人権」に関する行動計画が策定され、外務省の報道発表ウェブページには、行動計画が策定された経緯について、下記のような説明がなされています。
「近年、企業による人権尊重の必要性について国際的な関心が高まっています。国連人権理事会では「ビジネスと人権に関する指導原則」が支持され、各国に国別行動計画の策定が促されており、また、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に当たっては、人権の保護・促進が重要な要素と位置付けられています。本行動計画は、こうした背景の下、関係府省庁が協力し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえた上で、策定されたものです。」
「本行動計画においては、「ビジネスと人権」に関して、今後政府が取り組む各種施策が記載されているほか、企業に対し、企業活動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報共有を行うこと、人権デュー・ディリジェンスの導入促進への期待が表明されています。」
そして、「ビジネスと人権」に関する行動計画の第3章にも、「政府は、その規模、業種等にかかわらず、日本企業が、国際的に認められた人権及び『ILO宣言』に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し、『指導原則』その他の関連する国際的なスタンダードを踏まえ、人権デュー・ディリジェンスのプロセスを導入すること、また、サプライチェーンにおけるものを含むステークホルダーとの対話を行うことを期待する」との記載があります。
また、2020年10月23日付の日経新聞でも、人権デュー・ディリジェンスの重要性について、上記の「ビジネスと人権に関する指導原則」の策定にも携わった、ハーバード大学ケネディ・スクールのジョン・ラギー教授への下記のようなインタビュー記事が掲載されており、その中で、ラギー教授は、
「最も重要なのが指導原則で定めた人権デューデリジェンス(DD)だ。世界では人権DDの活用や義務化が進んでいる。日本も取り残されないよう義務化すべきだ」
「多国籍企業の多くは持続可能な供給網(サプライチェーン)の構築を目指し、公正な生活賃金を支払える仕組み作りをしている。アジアでも日本企業が拠点を置いているミャンマーやタイは強制労働の問題があり、人権DDの必要性は高い」
とコメントしています。
このような流れを見ると、海外(とくにASEAN諸国)でビジネスをしている日本企業については、具体的に人権デュー・ディリジェンスに取り組む必要性が加速していくと考えられます。
弊所では、ASEAN諸国に拠点を持つケルビンチアパートナーシップと緊密に連携しておりますので、ASEAN諸国における人権デュー・ディリジェンスをサポートさせていただくことが可能です。また、ビジネスと人権の観点や贈収賄防止の観点から海外のサプライチェーンと締結する契約(取引基本契約書等)において盛り込むべき契約条項ついても研究を重ねており、対応させていただくことが可能です。
ぜひ、お気兼ねなくお問い合わせください。